障害児モデルが「日本でいちばん大切にしたい会社」をPR。地球に優しく、誰でも楽しめる商品特性を伝えます!
神奈川県に本社を置く日本理化学工業。帆立貝殻を活用した「ダストレスチョーク」、窓ガラスやプラスティックなどツルツルした平滑面に描いて消せる「キットパス」を主力商品とする製造会社です。同社の特徴は、人にも環境にも優しい商品でチョーク製造のシェア国内1位を占めているだけでなく、社員の7割が知的障害者であるということ。しかも、障害者が戦力として働ける環境を整え、会社として利益が出るビジネスモデルを確立しているのです。今回、そのすばらしい企業のPRに弊社の障害児モデルが採用されました。撮影にも立ち会ってくださった広報の雫さんと上司の大山さんにお話を伺います。
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日本理化学工業株式会社
昭和12年の設立以来、衛生的で無害なチョークを作り続ける日本理化学工業株式会社。障害者2名を初めて雇用したのは昭和35年。当初は2週間限定の労働体験でしたが、一所懸命に働く彼女たちの姿に胸を打たれた同僚が「私たちが面倒を見ますから、どうか彼女たちを雇って下さい」と前社長に声を上げ、知的障害者の雇用が本格的にスタートしました。働き方は社員が会社にあわせるのではなく、会社が社員一人ひとりにあわせるよう工夫し、安心安全で大人も子供も楽しめる商品を提供。その取り組みは書籍『日本でいちばん大切にしたい会社』 で紹介されたほか、『カンブリア宮殿』『報道ステーション』『サンデージャポン』『ミスターサンデー』などでも取り上げられ、注目を集めています。
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──「障害児モデル」を御社の商品PRに活用していただきましたが、どんな経緯だったのでしょう?
代表の内木さんからお話をいただいたとき、「驚きのタイミングだな」と思いました。というのも、弊社の「キットパス」の主成分を大きくリニューアルして、多くの方に知っていただきたいなと、ちょうどPR用の撮影を考えていたタイミングだったんです。内木さんの思いにも大変共感しました。
──原料がお米のワックスになって、さらに優しくなったキットパス。子どもだけでなく大人も夢中になれそうな商品ですよね。
ありがとうございます。弊社は障害者雇用で注目されることが多いですが、商品自体の品質にも自信を持っています。キットパスを使った「楽(らく)がき文化」を、国籍もジェンダーも年齢も障害の有無も関係なく、より多くの方に広めたいという想いがありますので、PRでもそういった表現ができたらと考えていました。
障害のあるお子さんだけにスポットをあてるというわけではなく、それこそ垣根なく誰にでも楽しんで使っていただきたい。今回の撮影でもとにかくのびのびと絵を描くシーンを撮りたいと思っていたんです。
──今回はダウン症のすみれちゃん、自閉症と軽度知的障害のあるなぎさちゃんに活躍してもらいました。撮影当日の様子はいかがでしたか?
障害の有無に関わらず子どもにはいろんな個性がありますので、もしも彼女たちが「ひとりで楽しみたい」というタイプならそれでいいな〜と思っていましたが、ふたりとも初対面とは思えないくらいすぐに打ち解けて、笑顔でのびのびとお絵かきを楽しんでくれました。こちらもとくに何かお願いするでもなく、ふたりの世界に任せていた感じです。2人が仲良くキットパスを選んでお絵かきしたりお話している様子に心が温かくなりました。
──普段から障害のある方と接する機会が多い御社ですが、どんな工夫をされていますか?
弊社は障害のある社員のほかに、障害のない職員が営業や企画、総務などを担当していますが、福祉的な勉強は誰もしていません。入社前から弊社の社員構成を知ってはいますが、実際に現場でみんなと触れあう中で、コミュニケーションの取り方や指示の出し方を覚えていく感じです。
──具体的にはどのように?
たとえば会話での理解が難しい人には紙に書いてやり取りする、困ったときに自分から言いにくい人には何かしらその人に合ったサインの出し方を決めておく、というように、一人ひとりの理解力に合わせて話をするように心がけています。相手の立場になって「今はこの話をしないでひと呼吸置いてみようかな」など距離の取り方も考えますね。
──しくみやルールを整えることも大切ですが、まずは人同士の関わり方なのかもしれませんね。
そうですね。規模の大きい会社であればルール化が必須かもしれませんが、弊社にはとくに「障害のある社員との接し方マニュアル」はありません。
障害のない職員が入社すると、まずすべての作業現場を経験します。その中で、障害のある社員が同じ作業をものすごい集中力で熱心に続けている姿をすぐ隣で目にするんです。自分の持ち場や役割への責任感がとても強いというのを実感できるので、間違っても「この人たちは自分より下だ」とか「かわいそう」なんて思えないですよね。
仕事ができる・できないは、伝え方や工程の工夫で解決できることが多くあります。もちろん困ったことがあれば報・連・相を受けてその都度サポートしますし、職人さんのように自分の持ち場に集中する社員に対して、お互いに尊敬の念を持って接しています。
──社員のみなさんが互いを思いやって、いい表情でお仕事されているのも印象的で、こういう環境だからこそ質の高い商品が生み出されているんだなと思います。
自分でお金を稼いで自立できるというのはもちろんですが、仕事を通してみんなに頼られる・信頼されるというのもやりがいや幸福につながると思います。
弊社の場合、障害のある社員が「一般社員」→「6S委員」→「副班長」→「班長」の役職にステップアップできるようになっています。
6Sとは、よくある5S「整理・整頓・清潔・清掃・躾」の「躾」を「習慣」に変え、さらにSafetyを加えた6つのSができていることです。ここから格上げされると副班長になり、周囲へのサポートなどもできる人は班長になります。そして、その班長をさらにまとめるリーダーもいて、私たちなら見逃してしまいそうな小さな課題にも気づいて提案してくれたりします。「殿堂入りした班長」といいますか(笑)、みんなのリーダーとして大活躍しています。
──ルールありきではなく、実践しながら自然にできてきたしくみなんですね。やる気も出そうです!
そうなんです。みんな「あの人みたいになりたい」と背中を見てさらに成長していますし、たとえばもうちょっと頑張ってほしい部分があるとしてもそこを咎めるのではなく、社長はじめ職員が「6S委員の一員だもんね、信頼しています!」などという声かけをするようにしています。
──ちょっとお話を伺っただけでも、まさに「日本でいちばん大切にしたい会社」だなと思います。そんな素敵な会社の商品の良さを、障害児モデルたちがしっかり伝えてくれたでしょうか。
弊社の商品は誰にでも楽しく使っていただけるものです、ということをナチュラルに伝えられたと思います。
学校では美術を点数化して評価されますが、そういうのは一切なしで、自由に描く楽しさを発信したいです。何度消してもいいし、上から描き足してもいいんです。お子さんと親御さんが一緒に楽しむのはもちろんですが、大人だけで集中して描くのも最高に楽しいですよ!やわらかい描き味も特徴の1つなので、筆圧が安定しない小さなお子さまから、高齢の方まで全ての世代で楽しんでいただきたいです。
===華ひらく担当・内木美樹より一言===
『日本でいちばん大切にしたい会社』を読んで日本理化学工業の存在を知ったとき、「こんな会社が本当にあるんだ・・・!」と涙が止まりませんでした。以来、さまざまなメディアで目にするたびに、同社のすばらしさに深く感動し、もちろん商品も使わせていただいています。心から応援したい、日本で一番大好きな会社です。
「障害児モデルを日本理化学工業さんに使っていただけたら」という想いも最初から持っていたので、HPのお問い合わせ欄からメールをお送りしました。熱い想いを込めた長いメールでご迷惑だったんじゃないかと心配しましたが、ありがたいことに翌日すぐに返信をいただき、今回の撮影につながりました。
弊社では現在、障害児がモデルとなり写真好きな方々に撮影してもらう「写真コンテスト」の開催に向けて動いていますが、その特別審査員のおひとりとして同社代表取締役社長・大山隆久さんにご協力いただけることも決まっています。
障害者雇用の第一人者として日本中から注目を集め、個人的にも大好きな会社のみなさまに障害児モデルの存在を知っていただき、関わりを持てることは、私たちにとって最高に幸せなことで、非常に大きな一歩だと感じています。
弊社のモデルたちが楽しみながらPRに関わらせていただいた「キットパス」、みなさまもぜひお手に取って、「らくがき」を満喫してください!
取材・文/木戸上かおり