自閉症児のママとして、自閉っ子育児専門家として。保護者に寄り添いながら自分にできる最大限のことを
「チーム☆チャレンジ」にて障害児の支援をしていただく『応援サポーター』。兼古ビル・メインテナンスの兼古亮太さんに続き、サポーターになってくださった今川ホルンさんをご紹介します。
今川さんは、ご自身が自閉症児のママであり、「おうち療育で ことばが苦手な自閉っ子の会話力がどんどん伸びる おしゃべり上達メソッド」をオンラインで教える専門家です。
自閉症児のママとして、そして障害のある子を持つ保護者と向き合う専門家として、どんなことに悩み、どのように向き合ってこられたか、そして、なぜ応援サポーターに名乗りを上げてくださったのか、お話を伺いました。
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おうち療育で ことばが苦手な自閉っ子の会話力がどんどん伸びる おしゃべり上達メソッド
発達科学コミュニケーショントレーナー/自閉っ子育児専門家の今川ホルンがオンラインで伝授する「おしゃべり上達メソッド」。毎日子どもと会話する保護者だからこそ可能な「おうち療育」で脳の発達をサポートし、保護者の悩みや迷いにも寄り添いながら、自閉症児のコミュニケーション力・会話力の向上を目指す。自分自身もわが子の変化に感動したという「おしゃべり上達メソッド」をより広めたいと活動している。
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──オンラインで提供されている「おしゃべり上達メソッド」について、簡単に教えてください。
ことばが苦手な自閉症児の脳の成長を助けるために、保護者がどんな対応・声かけをするのが効果的かをオンラインで教えています。
「発達科学コミュニケーション」のトレーナーとして活動する中で、「自分自身の対応を変えることで実感したすばらしい効果をもっと広めたい」と思い、2020年にサービスをスタートしました。
──お子さんの変化を目の当たりにされたのですね。どのような効果があったのでしょうか?
私はもともと療育施設で臨床心理士として働いていました。下の子の育休とコロナ禍が重なったこともあり、急に在宅時間が増えた時期がありまして、自閉症っ子である長女と過ごす時間、話す時間も自然と増えていました。すると、娘の発話が明らかに伸びていたんです。
当時娘は療育施設に通っていて、その効果はもちろん出ていましたが、「私が接し方を変えればおうちでももっと伸びるかも」と思い始めて「発達科学コミュニケーション」を学び、家でも実践するようになりました。
それまでは、「おはよう」の代わりに「よう」とだけ言っていたような状態でしたが、たとえば「アルファード、乗った」と車の種類が言えたり、「インフルエンザで○○くんが休んだ」と今日あったことを具体的に説明できたりするように。お友達との会話も少しずつできるようになっていきました。
──その効果をもっと広めたい、と起業されたわけですね。
そうですね。短期間で娘が目に見えて変わったことに感動して、親が関わることの大切さを実感しました。
療育施設や保育園、幼稚園などに通いつつ、おうちでのコミュニケーションを変えていくことで、子どもの脳の発達をさらにサポートできると考えました。
──具体的にはどういったことを教えておられるのでしょうか?
まずやっていただくのは、負のスパイラルを解消することです。たとえば子どもが何か失敗すると、つい助言とか小言を言ってしまいますよね。よかれと思っていても子どもにとっては効果がなくて、イヤだと思わせてしまう。自分の言いたいことが子どもに伝わらない、と思うと、こっちは余計に怒ってイライラしちゃうという、悪循環です。
でもこれって、子どもも親も悪くないんですよね。
子どもが人に迷惑をかけないよう、叱って対処しようとするのが日本の親の傾向ですが、子ども、とくに発達障害児は、型通りのやり方では一人ひとりに対応することはできません。
自分の例を考えてみても、以前は「脳が育ちにくいコミュニケーションを取っていたな」と思います。脳の発達を目指すメソッドを親が身に付ければ、自分がイライラすることはなくなるし、子どもの態度も変化してきます。
──親御さんがイライラしなくなるというのは重要なことかもしれませんね。
そうなんです。わが家の場合、娘が3歳のときに自閉症と診断されました。以来、私はどこかで「障害者として」しか娘を見ていなかった気がします。
福祉の仕事をしていましたので「障害があっても大丈夫、変わらない」と思っていたつもりでしたが、幼稚園を決める段階になると「無理です」と断られ、はっきり診断が出ると「障害児保育なら可能です」という感じで、社会にふれようとすればするほど壁を感じることが増えていきました。
そうすると私も「大丈夫」とは思えなくなって、「周りの人の迷惑になっていないだろうか?」と気になって、「うちの子がうまくしゃべれなくてごめんなさい」と世間に謝ってばかりでした。
親がそういう気持ちでいると、やはり子どもにも伝わると思います。発達科学コミュニケーションに出会ってからは私自身に迷いがなくなり、軸ができてきたので、イライラすることも不安を感じることもなくなりました。
──会話力が増したことで、娘さんの気持ちにも変化が出ていますか?
言いたいことがあるのに伝わらないというストレスはなくなりました。癇癪を起こすことも減ってきました。
おしゃべりが本人を助けてくれるというのでしょうか、たとえ読み書き計算ができなくても、助け船を求められる仲間が周りにいればなんとかなる。その変化を目の当たりにしているので、私自身の考え方もすごく変わってきています。
以前は「将来、この子にどんな可能性があるだろう」なんて夢を見るのもこわいという感じでしたが、今は「あれしたい、これしたい」を言えるようになったので、本人が選択できることが増えています。私はただそれを応援してあげたい、と思うようになりました。
──そんな中、「チーム☆チャレンジ」の応援サポーターになってくださったのはどういうきっかけだったのでしょう?
同県内で活動されているママから「こういう団体があるよ」と教えてもらいました。私も普段から「障害児ママの声を集めていきたい」と思っていましたが、それを実際にやってくださっている方がいるんだと知って、ぜひともサポートしたいと。
「チーム☆チャレンジ」が実施している座談会を見るだけでも励まされていますし、いざ集まりたいと思ったときに「場」が用意されているのはうれしいですよね。
ひとりの声だと泣き寝入りせざるを得ないことでも、たくさんの声が集まれば大きな力になります。こういったコミュニティはあちこちにあったほうが効果があるし、何より心強くて安心です。
──自閉症児のママとして、また自閉っ子育児専門家として、親御さんたちにメッセージをお願いします。
子どもを変えるというより、自分の対応を変えることで、今より少しでも先に進める可能性があります。
私も以前は子どものできないことばかり目について、悩んでいました。それができることを見つけられるようになった、つまり私自身が変わったので、子どもにも変化が出てきました。
今でももちろん壁にぶち当たったり悩みを抱えたりすることはあります。でもその都度、袋小路に迷い込まず、「よしわかった、じゃあどうしようか」と次に向かって進めるようになりました。正しい情報を選択できなければ、インターネットや本などのいろんな意見に振り回されてしまいますが、今はそれがなくなったので迷うことはありません。それだけでもすごく楽だと思います。
子育てを今よりもっと楽にして、気持ちに余裕がでてくれば、自分の好きなこともできるようになります。おしゃべり上達メソッドを通して、そんな風に切り替えられるお手伝いができたらいいなと願っています。
===華ひらく代表・内木美樹より一言===
今回今川さんへのインタビューを通じて改めて思ったことがあります。それは、「人様に迷惑をかけてはいけない」という言葉が親に与える重さです。
普通の子育てでも「人様に迷惑をかけてはいけない」というのはもちろんありますが、障害児子育ては、それこそちょっと子どもが何か言うだけで「すみません、すみません」となりがちです。どこかに出かけるときも常に頭を下げて謝っているような状態で、それがまた親を苦しくしてしまっているなと思いました。
人に迷惑をかけないための気づかいは必要なことなのですが、たとえそうだとしても、親の考え方ひとつで障害児子育てはもっと明るく、もっと楽しくなっていくのではないでしょうか。
今川さんはそういった親の気持ちに寄り添いながら適切な支援をしてくださる方だと思います。
そのような方に『応援サポーター』になっていただけたことに改めて感謝したい気持ちでいっぱいです!